加速度センサー 基本と原理

1. 加速度センサーとは?
加速度センサーとは、構造体や物体の動きを把握するために必要な加速度を計測するセンサーです。 英語で加速度をaccelerationという事から、加速度センサーはAccelerometer sensor、または単純にAccelerometerと呼ばれています。
また、加速度の縦や横といった方向を考慮する事で、物体の動きだけでなく、姿勢の計測も可能です。 加速度センサーは加速度を計測することで、動きや姿勢を計測するために使われています。
- 動きを計測する場合、物体の動き・運動の変化をとらえることで、動きを数値化します。 この用途の例としては、「機械の振動状態の把握」、「車の車体の動きを把握して車体制御の情報とする」、あるいは「物体の落下衝撃の把握」といった用途で使われます。
- 姿勢を計測する場合、重力を計測することで地面の方向を検知して、姿勢角度(傾き)を把握するのに活用します。 より詳しい姿勢情報を得るために、ジャイロセンサーや磁気センサーなどによる向きの計測データと一緒に使われることが多いです。 この用途の例としては、スマートフォンの画面向きの検出や、人の動きの研究といった用途で使われます。
2. 加速度とは?
加速度(acceleration)とは、時間によって変化する速さ(velocity)の量の事です。 単位時間[s]当たりの速さ[m/s]の変化を表します。 速さ(速度)は距離(メートル、m)を時間(秒、s)で割った値なので、加速度は、速さをさらに時間で割った値です。 つまり、加速度は長さ(距離)を時間で2回割った値となり、単位は(m/as2)になります。
また、加速度の単位は[G]と表記することもあります。この場合、\( 1[G] = 9.806[m/s^2] \)という関係になり、この数値は万有引力定数により決まっている数値になります。
3. 加速度センサーの原理
加速度センサーは、おもりや物体が動くことを何らかの素子で検出することで、電気的信号に変換する仕組みになっています。 おもりや物体の動きは検出素子のたわみや変形を検出することで、加速度を検出して電気的信号に変換します。

圧電型と呼ばれる加速度センサーの例をご紹介します。 図3.1を合わせてご覧ください。
可撓部かとうぶと読みます。図3.1内の青色の部分です。板ばねになっていて、片側が固定されているので、 加速度が生じる方向によって揺れが生じ、板にたわみが発生します。
可撓部のたわみの大きさを検出するため、「圧電素子」と呼ばれる検出素子を配置します。図3.1の場合、可撓部の固定部付け根付近です。 加速度が発生すると、可撓部の先端は固定部よりも遅れて動くため、たわみが発生します。 圧電素子はこのたわみにより力が加わるため、加速度の大きさに比例した電荷が発生させます。 あとは圧電素子から発生した電荷を電圧に変換して検出することで、加速度の大きさに比例した出力をを検出することができます。
4. 加速度センサーの種類
加速度センサーには様々な種類があります。 たくさんある加速度センサーの種類を分類する際には、どういった原理を用いて加速度を検出しているかで分類されます。 図4.1に加速度センサーの種類をまとめた図を示します。 ご覧いただくとわかる通り、加速度センサーの種類は数が多いです。 その中でも特に、次に示す加速度センサーの種類は様々な電子デバイスで多く採用されており、見かけることも多いかと思います。
- 圧電型
当社製品 : MA3シリーズ
- 静電容量型
当社製品 : MVP-RF8シリーズ, MVP-RF8Wシリーズ, MVP-RF6Lシリーズ
- ピエゾ抵抗型
- 加速度センサー
- クローズドループ
- サーボ型
- オープンループ
- 歪みゲージ式
- 金属抵抗体歪みゲージ型
- ピエゾ抵抗型
- 静電容量型
- 圧電型
- 圧縮型
- せん断型
- 曲げ型
- 周波数変化型
- 振動型
- 表面弾性波型
- 歪みゲージ式
- クローズドループ
加速度センサーは、用いている原理の違いから種類ごとに得意・不得意があります。 よって、加速度を計測しようとした際には、計測したい加速度に合わせて加速度センサーの種類を選んでいく必要があります。 表4.1に小型の電子デバイスにて多く採用されている3つの種類の加速度センサーのメリットとデメリットを比較表にまとめました。
種類 | ||
---|---|---|
圧電型 | ピエゾ抵抗型 | 静電容量型 |
サイズ | ||
〇 | ◎ | 〇 |
価格 | ||
〇 | ◎ | 〇 |
精度 | ||
△ | △ | 〇 |
検出周波数 | ||
DC~低周波 | ||
× | 〇 | 〇 |
高周波 | ||
◎ | △ | △ |
加速度レンジ | ||
高 | 低 | 低 |
主な用途 | ||
衝撃検出 (自動車エアバック, 衝突評価) | 携帯機器向け | 衝撃検出 (自動車車体制御向け) |
「圧電型」は、特に検出周波数が高い用途、特に高速で回転するモーターや、ベアリングなど、設備の振動の計測などに向いております。 姿勢変化などによる、重力加速度成分を検出しないのが「圧電型」の特徴です。 運動加速度成分のみ検出したい場合に信号処理が簡易にでき、向いております。 逆に、DC成分(=周波数0の加速度成分。重力加速度が代表例)の検出は原理的にできません。
「静電容量型」は、三次元の動作をする人体や、ロボット、自動車などの車両の姿勢の動作解析などに多く用いられております。 「静電容量型」であれば、DC成分(=周波数0の加速度成分。重力加速度が代表例)の検出が可能です。 特に低い加速度、低い周波数の加速度を精度よく検出するのに向いております。
「ピエゾ抵抗型」は半導体技術を用い、検出構成が簡素にできます。 特に小型化に向いており、携帯機器への内蔵向けなどに向いております。
5. 加速度センサーの使用例
これまで加速度センサーの原理や種類と特徴などのを説明してきました。 加速度センサーは、工場などの生産ライン、自動車、またスマートフォンやスマートウォッチなど実に様々なところで使用されています。 私たちマイクロストーン株式会社は、加速度センサーのメーカーでありますので、ここでは、特に弊社の加速度センサーが使用されている分野の事例を紹介します。
5.1 工場機械の計測使用例
工場機械では下記のような設備の計測に加速度センサーを使用していただくことが多いです。
- 溶接用の産業ロボット
- モーター・減速機
- 切削加工設備
- 搬送用の産業ロボット
- ダイカスト装置
- プレス装置
設備の監視では下記のような目的のために設備の計測を活用いただいています。
- 設備の動作から経年劣化や摩耗を確認して不良をなくすため
- 振動に弱い製品の搬送時の監視をして品質を保証するため
5.2 人の計測使用例
加速度センサーで人を計測する際の例の使用例の一部をご紹介します。
- 人の歩き方の解析
- 手術後の動作の改善経過のチェック
- スポーツの動きの解析