歩行の「量」と「質」について(その3)

 
    

前回、『歩行の「量」と「質」について(その2)』でお示ししたこちらのイラスト。

皆さま、覚えていらっしゃるでしょうか?

 
歩き方(悪い例)
歩き方(悪い例)

出典:佐久市足育推進協議会 リーフレット

 

良い歩き方の見本、ではなかったですね。


そうです。

一見良さそうに見えて、実は「心配」な歩き方でした。


イラスト中に記載されている「心配」ポイントがこちらです。

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①肩に力が入っている。

②胸を張りすぎている。

③腰が反っている。

④お尻が後ろに残っている。

⑤接地時に膝が伸びすぎている。

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①から⑤を一言で表すと「力み(りきみ)」ですね。


人の身体というのは面白いもので、身体の表面に近い筋肉(アウターマッスル)が頑張りすぎると、奥の方の筋肉(インナーマッスル)がさぼるように出来ています。

イラストの例の様に、肩や背中、腰の筋肉が頑張りすぎると、お腹の奥にある腹横筋が緩んでしまいます。


腹横筋はお腹の一番深いところにあるコルセットのような筋肉で、横隔膜や骨盤底筋などと連携して、お腹の中の圧力(腹腔内圧)を保ち、姿勢や運動を安定させる働きをします。

また、私たちが手足を動かそうとすると、腹横筋が手足の筋肉よりも約0.1秒だけ早く筋活動を始め、これにより手足の動きによってバランスが崩れない様に姿勢が調整されます。


腹横筋がうまく働かずに動作が不安定になると「不安」ですから、意識しやすい表面の筋肉で身体を固定しようとして更に「力み」を生じます。

「力み」→「不安定」→「力み」→…という負のスパイラルです。

歩くという動作もダイナミックな姿勢調整の連続ですから、肩や背中、腰の筋肉の力みがあると、大事な大事な腹横筋の活動が低下して姿勢が不安定になり、手足の動きもぎこちなくなり、円滑な体重移動が出来なくなります。


論より証拠ということで、ご興味のある方は実際にイラストの「心配」な歩き方で歩いてみましょう。少し極端にやってみるとわかりやすいかもしれません。

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①肩に力を入れて!

②胸を張って!

③腰が反って!

④お尻が後ろに残して!

⑤接地時に膝を伸ばして!

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膝が曲がりにくいことに気がつくでしょうか?

しかも接地の瞬間だけでなく、後ろから前に振り出すときにも膝が曲がりにくく、両脚が棒のように伸びたまま、行進の様な歩き方になってこないでしょうか。

後ろから前に振り出す脚の膝が曲がらないということは、つま先が地面に近いところを通るということです。

そのため、1㎝程度のわずかな段差にもつまずきます。


転倒に注意が必要です。


また、着地の度に、膝や腰に嫌な衝撃を感じないでしょうか?

関節にゆるみが無く、緩衝しませんので、各関節にダイレクトに衝撃がかかります。

私は、腰痛持ちではないのですが、この歩き方をして1分くらいで腰が痛くなってきて、慌ててやめました。


関節疾患に注意が必要です。


やってみていただくと「確かに、危なそうだな」という実感が持てると思います。

くれぐれも、やり過ぎにはご注意ください。


「じゃあ、どうやって歩けばいいの?」ということで、次回は、安全で効率的な歩行を実現するためのポイントをお伝えしたいと思います。

お楽しみに。

(担当 野澤)


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